先日、那覇市前島にふたつのお店がオープンしました。ラーメン職人の嘉手苅辰樹さんが腕を振るう「Lang Tang(ランタン)」と、おいしい焼鳥とキメ顔でお馴染みの焼鳥職人 林格也さんが立つ「YAKISHIN(やきしん)」です。
お隣さんから醤油を借りる距離感の2軒ですが、今回わたしはLang Tangの方へ伺いました。実は、長いことラーメン職人の嘉手苅さんのファンでありながら、お話するのはほぼ初めて。麺揚げや雲呑包みなどを前に過ごす至福の2時間半でした。
ということで、さっそくレポートいってみよ〜!
こんな方におすすめ
- ラーメンが好きな人
- 日本全国のラーメンを食べ歩くのが趣味な人
- 新しいもの・珍しいことが好きな人
- 体験(エクスペリエンス)が好きな人
もくじ[隠す]
軍鶏そばフルコースの店「Lang Tang」について
職人がもてなす、それぞれの軍鶏料理
今回訪れたお店は、珍しい形態をとっています。
ふたりの職人が同じ食材「軍鶏」を使い、各店でそれぞれ別のコース料理を提供するのです。ラーメン職人がいるLang Tangと、焼鳥職人のYAKISHIN。ふたつとも同じ建物、同じフロアに隣り合っています。
職人の切り口から、各店について簡単に紹介しましょう。
Lang Tang 嘉手苅辰樹さん
ラーメン職人の嘉手苅さんが振る舞うのは、軍鶏そばのコースです。
嘉手苅さんは、東京の有名店「支那そば かづや」出身。「かづやの味とラーメン職人としての技術を、沖縄に広めたい」と、2015年に与那原町で支那そばかでかるをオープンさせます。その後西原町へ移転し、2021年には2号店、そして2024年には宜野湾市の3号店立ち上げに携わります。そして2024年7月29日、Lang Tangが那覇市にオープンしました。
ラーメン業界に入り16年。これまで習得した技術と経験を軸に、時折、洋要素をミックスする。枠にとらわれない嘉手苅式創作料理の軍鶏そばコースは、まさに唯一無二。オンリーワンの食事でした。
驚きの連続だった食材の組み合わせや調理方法、あれらはどのようにインスピレーションが湧くのでしょう。凡人には理解できないなぁ…
コース料理は季節や食材の旬を取り込み、その時々で変えていくそう。この料理人なら、常に大胆で斬新なモノを食べさせてくれると信頼できそうです。期待を超える食事が楽しみ!
ミリタリーテイストが入るユニフォームは、ファッションブランド「HIGA」のオリジナルデザイン。職人の顔によく馴染んでいると思いました。かっこいい。
YAKISHIN 林格也さん
さて、もう一軒のYAKISHINには、焼鳥職人の林格也さんが立っています。
南風原町で屋台の焼鳥店を立ち上げ、2016年に居酒やきしんをオープン。おいしい焼鳥の店があるという評判がじわじわ広まり、SNSで林さんのキメ顔を見ることが増えていきました。
南風原時代、林さんと嘉手苅さんのコラボイベントを行うなど交流があり、それらを経て、同じ地にお店をオープンさせたそうです。
ひらがな表記からアルファベット表記になったYAKISHINは、完全予約制。焼鳥と親子丼のコースというのは以前と変わりませんが、食材を軍鶏に変更し、コース料理を振る舞います。こちらも行ってみたい!
店名の由来
どうしてLang Tangという店名にしたのか、嘉手苅さんに伺いました。
「街を照らすランタンのようなお店にしたい。雲呑(ワンタン)とも掛けています」
ランタンとワンタン。確かにライム的なリズムは一緒です。でも、照明のランタンをアルファベット表記にするとLanternですが、ワンタンはWontonですよね。果て…?
これについては「あえて香港(Hongkong)っぽい語感にした」そうで、インバウンドを意識していると理解しました。確かに、那覇クルーズターミナルも徒歩圏内ですからね。
どこにあるの?駐車場は?
Lang Tangは若狭大通りと瀬戸川がぶつかった、めおと橋のたもとにあります。すぐ近くには那覇中学校やマックスバリュ松山店もありますから、目印になりそうですね。住所的には那覇市前島ですが、わたし的には那覇の飲み屋街・松山の外れにある隠れ家の印象です。
周囲の立地的も、お店専用の駐車場はありません。ただ、周辺にはコインパーキングが多数ありますから、車の置き場には困らないはず。国道58号線や若狭大通り、松山エリアでタクシーを捕まえられますし、アクセスは悪くありません。
お店の様子
お店に到着したら、階段で2階へ。右の店舗はLang Tang、左がYAKISHINです。別のお店とはいえ、実は内側が繋がっていて、スタッフが行き来できるようになっています。
扉を開けると、かっこいい空間!ラーメン職人を囲むように配されたカウンター席に、計算された照明、そしてインパクトに残る「LT」のネオン。一歩踏み入れて「オトコの城だ!」と思いました。店舗デザインは「STEHAN(すてはん)」が手掛けたそうです。
ゆったりの過ごせる客席数は8つ。若干の調整は可能そうなので問い合わせてみてくださいね。
ライブキッチンに刮目せよ!
ここで、わたしの反省点を取り上げます。
着席直後、ライブ感あふれる調理がすぐに始まりました。心の準備ができておらず、また、長年ファンだったラーメン職人 嘉手苅さんを前にすっかり緊張していたこともあり、しばらく対応できませんでした。笑
カウンターに座ると、コース料理を作る嘉手苅さんの一挙手一投足を目の当たりします。食べて、飲んで、会話して。眺めて、観察して、撮影して、記憶して。ただ食事するだけの目的ではなく、捉え方次第でひとつのエクスペリエンスとも言えそうです。
いまLang Tangでの時間を思い返していますが、わたしにとってとても幸せな時間でした。ラーメン職人は本当に素晴らしい。
メニューをチェック
こちらがLang Tangのメニューです。
Lang Tangは軍鶏そばのコースのお店。オープン4日目のこの日は、9品のメニュー展開でした。料金は成人・未成年問わず一律1人15000円です。税込・サービス料・ドリンク代がフル込みとなっています。
今後メニューのブラッシュアップがあるかもしれません。なので、参考程度にご覧ください。
料金が15000円と聞いて、ちょっと(というか結構)強気の設定だな、と思いました。お客さんを選ぶ姿勢を感じます。
ただ、高級飲食店のある松山の外れという立地、さらにコース料理中(2時間半〜3時間)はこだわりのドリンクが飲み放題です。そう考えるとハレノヒに訪れたい特別な店というのが最適解に思えます。
実食!グルメレポート
ここからは、わたしが実際にLang Tangで食べ飲みしたレポートです。2時間半ほどの滞在で軍鶏そばのコース9品と、ドリンクを5杯以上いただきました。
まずはアガリハマブルワリーのガジュマルWIPAでスタート。与那原町の新しいブルワリーで、クラフトビール好きからおいしいと評判です。この日は残本数がわずか1本。銘柄を確認せずに急いで注文し、開栓したボトルを確認すると、アルコール度数7.5%のWIPA!やっちまったー!笑
ハイアルコールですが飲みやすく、スイスイとグラスが空きました。普段はもう少し軽めのペールエールなども揃っているそうですよ。
あたふたしていると、嘉手苅さんが白い生地を切り分け始めました。何かな?とゆる〜く眺めていると、ていねいに餡を包み始めます。ああっ、もうライブキッチン始まってるんだ!と急いでカメラを構えるわたし。完全に準備不足だ…
手際よく包み、大鍋で泳がせたのは、1品目のゆで軍鶏雲呑でした。
Lang Tangでは器にも凝り、本田星陶所にオーダーしているそうです。そこに美しく盛り付けられて食べるのがもったいない… のですが、温かいうちににゅるん。やっぱり、支那そばかでかるの肉雲呑とは違う!これが軍鶏の雲呑なのですね。あと2〜3個食べて味を覚えたい。
2品目は焼き海老雲呑。これ、秀逸のおいしさです。ザクッという焼き目。これでもか!という海老の香りとプリプリ食感。これ以上においしい焼き雲呑とは、生涯出会わないのでは。鮮烈のインパクトでした。
茹で・焼き、2種類の雲呑にうつつを抜かしてはいられません。ライブキッチンでは、冷製担々麺の準備が着々と進んでいます。食べながら感動し、シャッターチャンスを逃さず、お酒も味わう。ブログはただの趣味なのに、本業のビジネスよりも忙しいぞ。
3品目、担々麺がやってきました。これがまた衝撃のおいしさで、只者ではありません。
毎朝泊いゆまちで仕入れる生牡蠣を、担々麺のソースと合わせています。なので麺をすすると磯の香りとミネラル感が充満し、圧倒されます。しかも、しっかり冷やされたつるつるの麺がおいしくって。1品、1品が驚き!
飲む手も止めていられません。料金にインクルードされていないextra drinkをオススメいただきました。そういうちょっと特別なクラフトビールやワイン、ウイスキーなども用意しているんだって。詳しくは店員さんにご確認を。
ビールを続けていると、4品目の昇華メンマがやってきました。細切りにしたメンマの炒めでしょうか。こういうのをちびちびとアテにしながらお酒をいただき、次のお料理を待つのが大人のいい時間だったりするのです。
嘉手苅さんがまたも目の前で何かをカットし始めました。ワンタンの皮かな?
その後、とろ〜んとしたスープを器に移し入れ…
5品目の昆布水がやってきました。
昆布水、ご存知ですか?先日一緒に麺を食べた友人は知りませんでした。ラーメン通なら知っている、だけど一般の方には浸透していない。そんな昆布水をLang Tangでいただきます。
冷製昆布出汁に合わせるのは、先ほどカットしていたいったんもめんです。この幅広の麺をいったんもめんと呼ぶのも、知らない方が多いかも。
昆布水のとろみを纏い、ぬるん、にゅるんの食感。双方のバランスがよく絶品でした。お腹の許容量さえ許せば、昆布水を全て飲み干したかったなぁ。
そうこうしていると、嘉手苅さんが味玉に何か仕込み始めました。注入してる液体について教えてもらうと、「海老の頭、ニンニク、鷹の爪をオリーブオイルで炒め、それを軍鶏スープでのばした海老ソース」とのこと。
6品目の味玉です。わたし、とろっとろの半熟玉子が大好物なんですよね。黄身には先ほどの海老ソースAが注入され、味玉にはミキサーにかけた海老ソースBがたっぷりと。2種類の海老ソースと共にいただく玉子。海老の香りが襲いかかってきました。これもウマかった!
そろそろお腹がいっぱいになってきました。ずっと気になっていたウイスキー、バスカーの緑をハイボールで注文します。最近はこのくらいのガス感がちょうどよいのです。
おや?グラスの奥に大きな蒸籠がありますね。そこには、10分ほど蒸気にかけた蒸しパンが並んでいました。えっ、軍鶏そばのコースに、パン!?
嘉手苅さん、なんとこのパンも作ったそう。「ラーメン屋さんの次は、パン屋さんです」とジョークを交えながら、作業を続けます。
そうしてやってきたのが、ビジュアルつよつよな角煮LT、7品目です。角煮LTはLang Tang、もしくはWeb業界的なところでいうLightning Talkかと思いましたが、レタス・トマトのLTでした。名付けに感じる、遊び心よ!
食事の後半に、この中華風角煮バーガーがものすごい圧をかけてきます。覚悟してください、だけど、食べて後悔するはずがありません。むっちりのパンに、極厚な三枚肉はホロホロの柔らかさ。背徳的な脂にうまうまの味付け、それらを吸った蒸しパンも抜群でした。
8品目の焼豚BLUEの調理は、出来上がりの1時間前に開始します。タレに漬けたキビまる豚のランプ肉、これをオーブンで40分かけて焼き上げます。
オーブンの出来上がり音が鳴った頃、特別にキッチン内に入らせていただきました。オーブンを覗き込むと、そこには焼き上がったばかりの焼豚が鎮座〜!
焼豚はそのままでも美味しいはず。なのに、ブルーチーズソースを贅沢にたっぷりと乗せ、蜂蜜を垂らしています。「チャーシューは焼きたてが一番うまい」と聞きましたが、確かにしっとり柔らかでおいしかったです。濃いめの味付け、クセのあるブルーチーズとはちみつが甘じょっぱい。この組み合わせ、なぜ思いつくんでしょう。いやもう嘉手苅さん、天才!
そろそろラストの9品目。いかにも「これから麺を作りますよ」的な生地が調理場に出されました。これを伸ばしてカットするのかな〜と思ったら、そうじゃないんです。これ、麺生地ではなく、餃子の皮が正解でした!
メニューに書かれていない焼き餃子を挟むニクい演出だけでなく、目の前で包む様子を見せてもらえます。これにはてぃあんだーというウチナーグチが降りてきました。嘉手苅さんだけではなく、ありとあらゆる職人さんはかっこいい。
番外編の焼き餃子を大きな鍋に並べ、たっぷりの熱湯を注いで茹で、湯切り後に焼き上げます。キビまる豚を使った餡がたっぷり包まれ、皮はもっちり、焼き目はパリッ。このビジュアルに餃子の平塚を思い出しました。
タレは3種類。中でも、クミンとコリアンダーなどが入ったスパイシーな特製醤油ダレがお気に入りです。主役級のおいしさで、何から何まで完璧すぎると感動もひとしお!
このあたりでドリンクのラストオーダー。お料理に合わせて、すでに4〜5杯はいただきました。「おいしいものをちょっとずつ」になってきたわたしは、十分満足です。
そして、お隣から炭火焼きの軍鶏チャーシューを手にしたYAKISHIN 林さんが。焼いた軍鶏チャーシューを手に登場するシーン、必見です。Lang Tangの10品目、最後の軍鶏そばは職人ふたりの合作なのですね!
さあ、軍鶏そばコースのメインディッシュができあがりました。
軍鶏の鶏ガラや乾物を加えた美しいスープに、嘉手苅さんらしい麺線の美しさ。焼鳥職人が手がけた軍鶏チャーシューが乗せられ、シンプルかつ究極の一杯!
熱々スープの湯気に乗り、軍鶏の鶏油にカエシの香りが漂います。ここまでの9品でお腹がいっぱいすぎるくらいなのに、なめらかな麺をすすった後は、箸が止まりません。サイズもシメにちょうど。こんなに上品なシメラーは他に類を見ません。
軍鶏チャーシューはしっかりとした食感です。適度に脂が落とされ、あっさり食べやすかったです。ああ、最後の最後まで食べ甲斐のあるコースでした!
まとめ
ということで、那覇市前島の「Lang Tang(ランタン)」で軍鶏そばコースをいただいてきました。
この記事を読まれた方に質問があります。
ラーメン1杯を分解したコース料理だとお気付きでしょうか。お食事を一品ずつ見ていくとわかりにくいかもしれません。でもメニュー表を眺めると、そうだとわかる気がします。面白いこと考えるもんだなぁと、わたしは感心しました。
一般人がラーメン職人と対話するなんて、そうできることではありません。ですが、Lang Tangなら話ができます。おいしい食事をいただくのはもちろん、話す・聞くというエクスペリエンスにこの店の魅力を感じました。「スープから口をつける方が多いけれど、実はラーメンは麺から食べるのがおいしい」なんて、これまで思ってもみなかったことが聞けたりするのですから。
好きな道を追求するオトナ、素敵ですよね。職人の道を極めるというのは、もちろん厳しいことだってあると思うんです。それでもその道を進む背中がかっこよくて、尊敬する方から学べるものが多い。だからわたしは職人が好きなんだなぁ。そんなふうに思いながら、このブログを書き上げました。
終わり。
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お店の情報
店名 | Lang Tang(ランタン) |
住所 | 〒900-0016 沖縄県前島3丁目21-1 宮城ビル2F右 |
営業時間 | 18時〜23時(最終入店21時) |
定休日 | 日曜(SNS要確認) |
駐車場 | なし。近隣にコインパーキングあり。 |