東京からの御一行様たちと一緒に、沖縄本島北部の離島へ行ってきました。向かったのは、沖縄本島からフェリーで30分の伊江島。目的はこの島で作られているラム酒「イエラム サンタマリア」の工場見学です。
伊江島蒸留所に到着すると、イエラムの知念さんが外で待っていてくれました。早速、この蒸留所の工場見学が開始。
沖縄県内には、本島・離島合わせて50もの泡盛の蔵元があります。でもこの伊江島には泡盛だけじゃなく、お酒を作ってきた歴史がありません。隣の離島、伊是名・伊平屋では泡盛が作られているのに、伊江島には島酒が無かったそうです。理由は、伊江島では泡盛を作るのに必要なお米が作れなかったから。
でも伊江島のサトウキビならラム酒を作れるんじゃないか?と、次世代型エネルギーの実証実験施設を引き継ぎ、伊江島蒸留所にしたそうです。
ラム酒の原料となるサトウキビの圧搾行程では、サトウキビを1本1本投入せねばなりません。1トンのサトウキビを搾るのに5時間も6時間もかかるそうです。最初の頃は1日中この圧搾作業でおかしくなりそうだった、と聞きました。随分苦労されたようです。
サトウキビは3度搾られ、1番果汁から3番果汁まで全て利用します。
カスとなったサトウキビは、堆肥や家畜の餌として無駄無く再利用するそうです。サトウキビのカスが少し残っているのがおわかりでしょうか。
続いて伊江島蒸留所内に案内されました。これがまぁ、圧巻のライン数!このパイプを見て「うわー、クラフトビールのブルワリーと比べると、ラム酒って作るのが複雑なのか?!」と思ったのですが、先程も書いた通りここは元々実験施設として建てられた施設で、施設をそのまま再利用したためパイプの数がもの凄いことになっています。なんせ12億円もかけて建てられた実験施設ですからね~。
ラム酒には、黒糖を作る時に出る廃糖蜜を使ったラムと、アグリコール・ラムの2種類あるそうです。一般的なラムはサトウキビを搾ったジュースを煮詰め、砂糖の結晶を分離させたあとの廃糖蜜を使って作ります。なので、黒糖工場に併設して蒸留所があったりするみたいです。
一方、イエラムのようなアグリコール・ラムは、サトウキビのジュースを煮詰めたり砂糖の結晶を分離させず、搾ったジュースをそのまま発酵・蒸留して作るとっても贅沢なラムなんだとか。ラムの製法が違うことも、安いのと高いのとの違いもわからなかったので、知念さんのお話を聞いて非常に勉強になりました。
タンクの側面にある手書きのメモリ。酒好きとしては、こういう細かいところまで気になっちゃう。
伊江島のサトウキビ収穫は1月中旬頃なのでしょう。知念さんは「来週からサトウキビの圧搾を始めようと思ってる」と話してくれました。我々が1週遅く伺っていたら、忙し過ぎて見学できなかったかもしれません。見学できたことはかなりラッキーだと思いました。(工場はフル稼働していないので、見学希望者は必ず事前連絡がオススメ)
サトウキビの収穫時期に合わせてラムを作るとなると、年間のラム生産量が決まってしまいます。それだとお仕事にならないわけですから、伊江島蒸留所ではサトウキビのジュースを濃縮して保存し、仕込みのときに水分を加えて濃縮還元して使うんだとか。お酒の種類によって作り方が全然違うのも面白いです。
そして蒸留装置が出てきました。機械内部のお話はなかったのですが、1度目の蒸留ではアルコールが高すぎ、3度目の蒸留ではアルコールが低過ぎるので、2度目に蒸留した部分を商品として寝かせるそうです。知念さんは天井まで伸びたパイプを指差しているのですが、
写真に収まりきらない高さなのでタテで撮れば良かったなぁ。
3度目の蒸留のときには余分な油も浮いちゃうから不要なところはすくって捨てる、というお話のところで、「そういえば失敗したビールは税務署を呼んで捨てなきゃいけないんだけど、ラムはどうなんだろう?」と思ったので、質問をぶつけてみました。工場見学の面白さは、実際にお酒を造っている造り手さんに突っ込んだお話が聞けるところだな~。
蒸留したラムはスチールタンクとオーク樽に分けて熟成されます。スチールタンクで寝かせたものはイエラム サンタマリア クリスタルになりますが、説明はあっという間に終了して、知念さんはオーク樽の貯蔵庫へ。
貯蔵庫に入ると、ふわっとお酒のいい香りがしました。
オーク樽に詰められたラムはここで3ヶ月ほど熟成され、瓶詰めして出荷します。樽熟成のラムはイエラムサンタマリア ゴールドになるわけですね。
ここにあるたくさんの樽を急いで準備したいきさつや、樽ごとの個性によってラムに色がうつりやすい・にくいがあったりだとか、商品についてお客さんからクレームの電話が入ったり...という興味深い話も聞くことができましたが割愛。こういう話は伊江島蒸留所に直接行って、見学しながら聞いてもらいたいな~。
樽に入っているイエラムのモチーフになっている伊江島名産テッポウユリと伊江島タッチュー、そしてブランド名「サンタマリア」の関係についても、是非この蒸留所に来てお話を聞いてみてください。
ちなみに樽ナンバーT1とT9には、試行錯誤して蒸留した初仕込み原酒が入っていて、この2つを目指して仕込みをしているんだそうです。T9はプレミアムラムとして瓶詰めされ、それぞれ島内の酒屋やお土産コーナーでも売られてます。
樽の裏側。伊江島蒸留所で使っている樽は、ニッカの蒸留所で使われていたものだそうで、中にはかなり年期が入ったものが混ざってそう。
この貯蔵庫は温度・湿度の管理をしていません。知念さん曰く「島酒がなかった伊江島の初めてのお酒だから、最初から手を加えず、自然な状態で造っている」そうです。夏に熱いな~と思ったら窓を開けて空気を入れたり、寒くなったら閉めるというような、島の気候に合わせて造るんだとか。伊江島ではエンジェルシェア(=樽内の液体が蒸発すること。天使の分け前)が1年で3割もあるそうで、それだけ熟成も早く進むみたい。
こういうときの巨匠は、ほんっといい顔してるなあ。
貯蔵庫を出て瓶詰め行程で使う機械の説明も受けましたが、これも現地で裏話を聞いて欲しいですね~。
試飲スペースへ移動して、イエラム サンタマリアのクリスタルとゴールドを飲ませてもらいました。
左がゴールド、右がクリスタルです。
今までラムは苦手意識があったのですが、どちらも飲みやすいラムです。市販されている外国のラムとは全然違う!クリスタルは蒸留されたラムの味がストレートにわかると知念さんに説明してもらいましたが、樽で熟成されたゴールドと比べると少し物足りない感じです。
サトウキビからつくられたイエラムのカクテル用シロップを、クリスタルに入れて変化を楽しみました。こちらははカクテル用のラムとして使うのも悪くなさそう。ゴールドはストレートやロックで色や香りを楽しみながら飲むのがベストですね。
ここまでお酒を我慢してきた巨匠も...
イエラムを飲んで、すっかりゴキゲンな表情です!ずーっとおいしい~!って言ってたなー。まこっちゃんはマジメな人で、お酒造りが心の底から大好きなんだろうな~と、今回の蒸留所見学で思いました。ただの飲兵衛ではなかった!
ちなみにこの試飲スペースはお土産コーナーで、イエラムの他にも伊江島産のソーダや落花生類、イエラムをつかったカクテルなんかも販売してます。が、この日はシーズンオフの日曜日ということもあって、売店はお休み。営業していないのに、知念さんのご好意で蒸留署見学をさせてもらったようです。ありがとうございました!
イエラム サンタマリアのプレミアム品・T9。12400円といいお値段なので手が出ませんでした。一度飲んでみたい...
最後はイエラムの造り手さん、知念さんとキャンポーズでシメました!
ということで、イエラムを造っている伊江島蒸留所へ工場見学に行ってきました。
実を言うと、わたしはラム酒に苦手意識を持っていました。なんというか、飲んでて眉間にシワが寄るといいますか、飲み方がわからないといいますか...。ラムを飲むときは口に含むと違和感があったのですが、イエラムは刺すようなアルコール感がなく、スッと入ってゆく飲みやすさと、豊かな香りが心地よかったです。イエラムおいし!今度うちの父にも贈ってあげよ~っと。
終わり。
住所:〒905-0502 沖縄県国頭郡伊江村東江前1627
(*・ω・)つ 沖縄食べ歩き情報もどうぞー♩