神戸は洋食の街。一言で洋食といってもフレンチでなければイタリアンでもなく、アメリカンでもありません。ここ神戸の街の洋食とは、日本独自に発展した洋食文化のこと。しかも日常的に使えそうなお店から、手を出しにくい高級店まで、とにかく多岐にわたるのも特徴です。
わたしが訪れた老舗「欧風料理もん」は、数ある神戸市の洋食店でも格式が高い一軒です。
昭和11年創業ということは今年で88年目で、いろいろ老舗店を食べ歩いてきたわたしの経験的にも、古いお店にあたります。それだけ営業していると知名度が高く、行列もできるのでしょう。日曜のオープン5分前に到着すると、10名ほど待っていました。
11時ぴったりに入店開始。振り返ると、わたしの後にもすでに5〜6人が並んでいます。全般的に年齢層はやや高めで、男女比は半々くらいに見えました。お店の前には日陰がなく、光合成をしながらこんがり焼かれます。夏場は特に日傘がマストです。
建物に入ると、レトロな雰囲気。振り子時計、アンティークカラーのレンガに、懐かしい柱デザイン。「網焼 美富貞喜」の読み方をしばし考えましたが、ヨシトミサダキの人名にしては網焼がおかしいし、おそらくビフテキと読むのでしょう。
この日は1階席だけでの営業でしたが、建物2階にはテーブル席が、3・4階では神戸牛のすき焼きとしゃぶしゃぶを味わえるそうです。
並んだ順に1階席に進むとテーブル席がふたつほど、カウンター席が7〜8席用意されていました。わたしはギリギリ1巡目で入れました。オープンからわたしの入店まで3分かかっていませんが、すでに食べ始めているお客さんがいてびっくり。早い人で20分ほどで退店されていました。想像以上に回転が早い!
こちらが欧風料理もんのメニューです。揚げ物、煮込み、焼き。それにパンものやごはんものも揃います。どのメニューも単品なので、ライスやパンは別注文が必要です。単品メニューにビールを合わせるのも良さそうですが、この後のスケジュールを考えてアルコール抜きにしました。
順番に注文を受けるようで、わたしの元に店員さんがやってくるまで店内を眺めて過ごしました。お店全体がアンティーク調ですが、建物自体は阪神・淡路大震災の後に建て替えられたもの。それでも30年近く経過していますから、セピア感が出るのでしょう。
しかも、家具の一部は震災を潜り抜けた創業当時のものだとか。目の前のヤカンにもありがたみを感じます。
この日いただいたのは、ビーフカツレツ(2860円)です。オーダーを伝えてほんの数分、体感的には秒で提供されました。ビフカツにはライス(280円)を添えています。
大きなビフカツの下にはスパゲティ、アスパラ、ジャガイモが隠れています。お皿がシンプル、盛り付けもシンプル。この様子に「いにしえより現代に続く伝統のビフカツ」のフレーズが浮かびました。
神戸牛のヒレ肉を使っていると聞くビフカツに、いざ、ナイフを入れてみると…!もう、驚き!沖縄で食べる赤身ステーキって、フォークで一生懸命押さえて、ナイフでギコギコ刻むイメージです。ですが、欧風料理もんのビフカツは、スッとナイフを入れるだけでサックリ切れ、ミディアムレアなお肉を覗かせます。
フォークで持ち上げたお肉は、とにかく柔らか。事前に聞いていたものの、その次元が違うのです。こんな柔らかな牛肉は、そう簡単に出会えるものではありません。口に含むととろけて消えるから、噛まなくても食べられそう。神戸のビフカツって飲み物だったの…!?
数週かけて作ると言うデミグラスソースは、赤ワインの香りとさらりとした旨味。これがビフカツとおいしく絡み合います。その合間にいただくケチャップスパゲティはお口直しになり、ソテーされたアスパラもいい火の通り。ほんのりバターを感じるポテトもおいしくって!いい塩加減なのです。
そんなビフカツに、硬めに炊かれたごはんが合う〜!どうやらおかわり自由らしく、先客の男性が2杯目を掻き込んでいました。
さっぱりフレンチドレッシングのサラダもバランスが取れています。揚げ油と複雑なソースのビフカツに、酸味とみずみずしさを感じるサラダがいいなぁ。
卓上にはカラシも用意され、試しにつけてみることに。
そのままはもちろん、カラシでさっぱり感が増すから4〜5枚ペロリといただけそう!カラシのおかげで洋食感が増すから、パンで食べる、あるいはサンドイッチもおいしいだろうなぁ。
欧風料理もんではクレジットカード決済やキャッシュレス決済を行なっておらず、お会計は現金のみ。わたしが食事中、ビーフカツのサンドウイッチなどをテイクアウトするお客さんがいました。包装紙がかわいらしいなと眺めていたのですが、こちらは川西英という版画家のデザインだそうです。こんな手土産をもらえたら、めちゃくちゃ嬉しいね!
ということで、神戸の老舗洋食店「欧風料理もん」でランチを食べてきました。普通の生活で3000円オーバーのランチは気が引けるけど、とろけるビフカツはもちろん、デミグラスソースや添えられた副菜を味わうと、価格なんてどうでもいい気持ちになりますね。それくらい満足度が高かったです。
神戸の洋食屋さんは、この一軒しか経験がありませんが、この地の洋食料理人のレベルの高さを垣間見ました。バジェサグラードの前田さんも言われていましたが、神戸グルメといえば洋食は欠かせない存在でしょう。
終わり。
お店の情報
店名 | 欧風料理もん |
住所 | 〒650-0012 兵庫県神戸市中央区北長狭通2丁目12-12 |
営業時間 | 11時〜21時 |
定休日 | 月曜 |
駐車場 | なし |