青森に泊まった夜のこと。JR青森駅前を散策中、夜道通りで「パンとケーキ パンとケーキ パンとケーキ」というカラフルな看板を目にしました。夜も遅い時間帯なので、もちろんお店の電気は付いていません。なんとなく気になり「栄作堂本店」という店名を検索してみます。すると、昭和6年創業の老舗パン屋さんと判明。これは実家へのお土産にしようと、翌日、開店時間に訪れました。が、めちゃくちゃ並んでいます。平日の朝10時過ぎです、こんだけ並ぶっていったいどうした!?
購入に何分かかるんだろうと思いつつ、最後尾へ回ります。わたしの後ろにもどんどん人が並んでいきます。通行人が「何があるの?」「どうして並んでるの?」と並んでいる人に尋ねたりしていました。それに対し「明日で閉店なの」という回答が耳に入ります。
そうなのです、この「栄作堂本店」は2017年8月31日で閉店してしまった老舗のパン屋さんです。偶然そのタイミングで青森に滞在していたわたしは、お店の前を通りかかりって町のパン屋さんを目にし、閉店を知りました。もう2度と食べられないでしょうから、食べてみようと行列に並びました。
1時間ほどかけて、やっとお店の前までやってきました。店内にはケーキのショーケースが置かれています。でも殆ど商品は並んでいません。
栄作堂本店の名物・ぽんぽこ(320円)は10匹くらいいたのですが、わたしの前のお客さんたちが1匹、2匹と引き取って行き、わたしの前の人が3匹持ち帰ったので、わたしの時にはぽんぽこは完売状態でした。
クリームをたっぷり包んでいそうな大きなオムレット(430円)もおいしそうです。
エクレアやシュークリーム、マドレーヌも販売していました。パンとケーキのお店なのですが、閉店前日とあって、ケーキの製造は最低限にしているような印象です。
一方、パンはというと... 通り沿いに置かれたパン棚もスッカラカン。何一つ置かれていませんでした。こんな状態なのに、表には行列が伸びる一方です。
それでもお会計の列は少しずつ進みます。店内に張り出されていた閉店のお知らせを眺めつつ、自分の順番を待ちます。
店内に入って初めてわかったのですが、カウンターの上にカットされていない食パンがドーンと置かれていました。みなさん、この食パンを購入して帰っているのです。食パンは注文が入るたび丁寧にカットし、包み、お会計をしています。
食パンは1本ままでも購入できるし、お好みの厚み・枚数で購入することもできます。お客さんごとに厚みと枚数が異なるので、これをワンオペで対応するとなると、そりゃあ時間もかかるだろうなぁ。
食パンをカットしてもらっている間、目に入ったのが戸棚に貼られた手書きのメモ。これ全て、パンの予約です。
店内に入ったらいろんなパンがあるかな、と思ったのですが、カウンターのパン棚もご覧の通りスッカラカンでした。
でも、お店の奥に置かれたバットに気が付いたのです。そこにはたくさんのぽんぽこと、いくつかのパンがあるっぽい。お店の方に「あれは買えますか?」と確認するとOKが出たので、どんなパンがあるか教えてもらって購入しました。
レジ待ちの間、店内に貼られた数々の新聞記事や古い広告などを眺めていました。中には昭和8年のものまであって、お店の歴史を感じ取りました。
1時間以上並んでやっと買えた栄作堂本店のパンを抱えてお店を出ると、奥にある古い建物が気になりました。
近づいてみると、緑色の引き戸の奥にはパン工場。この日の営業はまだ始まったばかり。焼きたての食パンが、これからどんどんお店に並ぶのだろうなぁ。わたしの後ろの人たちは「パン買えないんじゃない?」と心配していたけれど、まだまだあるから安心して並んでね。
栄作堂本店のパンを函館の実家に持ち帰り、早速食べてみることに。今回購入できたのは、こちらの3種類です。
まずは、お店のお父さんに「バタークリームのパンだよ」と教えてもらった、ナイト(140円)です。バタークリームってベタッと重たい印象でしたが、このナイトは軽くてとっても食べやすかったです。甘さは控えめのクリームがたっぷり。コーヒー風味のパン生地とマッチしています。
お次はマドレーヌ(190円)。洋酒の香りが心地良いです。食感は軽めで表面もベタベタしてしていません。甘さもほどよいですし、今時のハデさはないけれど、しっかりおいしいマドレーヌです。
こちらは食パン(280円)。1斤をトースト用に6枚カットしてもらいました。実にシンプル。素朴で毎日食べるパンにぴったりだと思います。食パンのお手本のような食パンだからでしょう、食パンを使っている喫茶店があるとか。栄作堂本店が閉店した後、その喫茶店は今どうしているのだろう。
ということで、青森の老舗パン屋さん「栄作堂本店」のパンを食べてみました。偶然にも閉店間際に訪れることができた栄作堂本店。昭和の初めから続いてきたお店ですから、閉店するにしてもかなり大変な思いをされたのではと思います。平日の真昼間に人の列を見て、このお店がどれだけ地元の人に愛されてきたのか、一見のわたしにもしっかり伝わってきました。たった一度しか食べられなかったけれど、昔懐かしい味をありがとうございました。
終わり。
住所:〒030-0801 青森県青森市新町1丁目14-1
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